日本透析学会雑誌を読んでいると、長期透析と認知症に関する論文が掲載されていました。
認知機能は、一般的には記憶や遂行機能が低下してきますが、透析患者では注意力や見当識障害が低下してくるようです。
また、不思議なことに、腎移植などをすると改善するケースがあるようで、どうも尿毒素などと関与していることがあるようです。
頻度としては、軽度認知障害を含めると30-60%と記載されていますが、経験的にはそこまで感じることはなく、把握しきれていないかもしれません。
理由としては、維持透析患者に認知機能テストをすることがなく、精査を行わないため、把握しきれていない可能性があります。
透析の特殊性としては、透析中のダイナミックな血行動態、血圧の変化があります。
血管性の認知症の出現を抑制していくためには、透析中の血圧低下など血行動態を安定させるために注意をしなければなりません。
除水速度や透析液温度も認知症のリスクになるようです。
また、睡眠剤としてよく処方されるベンゾジアゼピン系も認知症の発症リスクになるため留意しなければなりません。
認知症に関しては、基本的には薬剤ではなく、患者を中心とし、尊重しながら適切に対応することが一番です。
とはいえ、週3回お会いする患者様に対する接し方は日常的な範囲でいいと思いますが、治療介入となると安易ではないと思います。
MCIを見つけるために、積極的に検査をするべきかどうか?となると私は積極的にはできません。
有用な治療法がない現状では、結果に精神的なショックを受ける方がいるかもしれません。
前向きに考えようとしても、どこかで落ち込んでしまう出来事だと思います。
また、結果がわかって予防策を講じるとしてもそれが適切かどうか?、患者さん側からするとMCIとわかっても行動変容が生じるか?となると、医療従事者、患者側も中途半端になってしまうかもしれません。
現状では、生活上何らかの支障が出現した場合に対応していくことが現実的かなあと思います。