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院長の臨床メモcolumn

2023.10.29

エベレンゾ®による甲状腺機能低下症

腎性貧血の治療薬としてHIF-PH阻害薬が最近よく処方されている。

そのなかで、エベレンゾという週3回の製剤がある。

エベレンゾで、副作用としては頻度は少ないと思われるが、甲状腺機能低下症が発生する可能性があるという報告がある。

発生の報告では、おおよそ薬剤開始1週間で甲状腺機能が低下し、その後、進行した場合は甲状腺機能低下症状が出現する可能性がある。

ただ、甲状腺機能低下症に気付き、中止した場合は2-3週程度で甲状腺機能は投与前の水準に回復している。

エベレンゾは甲状腺ホルモンであるT3(トリヨードサイロニン)に化学構造が似ているため、甲状腺刺激ホルモンが分泌される脳下垂体での甲状腺ホルモン受容体βが活性化され、TSHの分泌が低下することがあるらしい。

つまり、甲状腺ホルモンが十分あると思って、脳下垂体ホルモンが分泌しなくても大丈夫と分泌を少なくしてしまう。

そのために甲状腺ホルモンでよく測定されるfree T4が低下し、状態が進むと甲状腺機能低下症の症状(食欲低下、倦怠感など)が出現する。

ただ、これはあくまで仮説であり、まだはっきりした機序はわかっていない。

エベレンゾはHIF-PH阻害薬の中でも貧血に対するHb上昇効果が強く、週3回製剤であり、有用な薬剤と考えている。

このような報告があり、投与後には甲状腺ホルモンの血液検査を行うこととしている。