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院長の臨床メモcolumn

2019.11.12

新しい腎性貧血の内服薬:エベレンゾ

本日、新しい腎性貧血の経口薬の説明会がありました。

商品名はエレベンゾ。

これは世界初の、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬で、腎性貧血としては初の内服薬です。

このHIF-PH阻害薬は内因性のエリスロポエチンを増加させる薬ですが、さらに鉄代謝に非常に需要な働きをしているヘプシジン低下させます。

つまり、ヘモグロビンが上昇するだけではなく、鉄の利用効率も上昇するので、さらにヘモグロビンが安定しやすくなります。

ダルベポエチンとの比較試験では、

①ヘモグロビンの維持に関しては非劣性

②鉄利用率が増加するため、鉄の利用状態にかかわらず、安定。

通常ですと、鉄利用率が悪いと、貧血の薬は多く必要になります。

ですが、エベレンゾの場合は、鉄利用率が悪いと言われる、TSATが低く、フェリチンが高いようなケースでも効果が十分に発揮されます。

③高感度CRPの低下(炎症の抑制)

上記の3つが試験結果として報告されました。

もちろん副作用はあり、特に血栓症の副作用は気になるところです。

この薬剤によりこれまで使用してきたESA(注射製剤)の使用量は減ることとなります。

ESA多く使用している場合と少ない場合と比べると、ESAを多く投与しているほうが、心血管イベントや死亡率が多くなるという報告もあります。

では、エベレントを使用して、ESAの投与がなくなれば、心血管イベントは減るのでしょうか?

臨床的にはそこが大切です。

エベレントによりヘモグロビンが安定し、鉄の利用率が上昇し、炎症が抑制された結果、患者さんにどれだけのメリットが示せるか?

画期的な薬剤と思いますが、そこが、今後問われると思います。