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院長の臨床メモcolumn

2013.01.04

味覚障害

味覚障害で困っている透析患者さんがいます。
「何を食べてもにがい」と。
食べるのが楽しみなのに何を食べても苦いので逆に苦痛で仕方ない。
味覚障害は時に遭遇します。
味覚障害は自分で感じる症状なので訴えない限りわかりません。
しかし実際味覚障害の診断、治療は本当に難しいです。
 
味覚障害の原因として有名なのが①亜鉛欠乏。
血液中の亜鉛が少ないと味覚症の原因となります。
あとは②薬剤性の味覚障害。有名なものでは睡眠剤や抗うつ剤があります。
薬剤性のものは亜鉛を邪魔して亜鉛が少なくなり味覚障害が生じます。
あとは口腔内の異常や神経によるものです。
それ以外にもこの患者さんのように腎臓病や糖尿病などの疾患も味覚障害の原因になりえます。

しかしどれが原因はというのはなかなかわかりません。
診断材料が少ないからです。
画像を見て一発でこれというものは少ないです。

10種類以上ある原因の中で臨床上断定できることは少ないです。亜鉛欠乏があったとしても実際亜鉛を内服しても良くならないことも多々あり、医師も患者さんもすっきりしません。

治療としては亜鉛(硫酸亜鉛、プロマック)、ビタミン、漢方薬などがあり、随時治療していきますが効果は少ないです。

薬剤性の場合は薬剤の変更や中止+亜鉛の内服を行いますが、必要な薬を早々変更や中止できないのが現状です。

このすっきりしない味覚障害ですが、まずは亜鉛の補充はすべきだと思います。
早い方は2週間で効果を表します。
それで半年経っても効かない場合はやめた方がいいと思います。

この方は当院では治すことができず、味覚障害の専門家や神経内科や歯科にも行きましたが結局は原因がわかりませんでした。

悩んできるこの患者さんは「治れへんのかなあ?」といっていました。
そこで医師は「味覚障害は治らない」と言ってしまってはいけないと思います。

「治らない」ではなくて、「自分なりに一生懸命やってきたが、自分の力ではあなたを治すことができない」というべきだといつも思います。

今回は残念ながら治ることはできませんでしたが、治す希望をかなえる選択肢は常に持っていきたいと思います。