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院長の臨床メモcolumn

2024.10.13

リン吸着剤の歴史と感想

・1999年炭酸カルシウム発売

研修医となった年。炭酸カルシウムが処方していた記憶。今はなきアルミニウム製剤が記載されていた処方箋を見たのは今となっては貴重な体験

・2003年 レナジェルやフォサマック発売

2022年から本格的に腎臓と透析の専門医の研修を開始していた。炭酸カルシウムだけではリンが低下しないことも多く、Caが著明に上昇してしまうことも多数あった。

・2009年 炭酸ランタン発売

レナジェルなどはカルシウム非含有で高Ca血症は減少したが、錠剤数が多く、便秘や腹部膨満などの副作用に悩まされた。リンを下げたくても錠剤を増やすことも困難なことがあった。そこに炭酸ランタン(ホスレノール)誕生。当初はチュアブル錠で噛みまくる、つぶしまくる必要があった。しかし、1錠当たりのリン吸着力が強く。リン管理がしやすくなった。

・2012年 キックリン発売

レナジェルと比べて錠剤数は同じであるが、腹部膨満などの副作用は軽減した。効力は同等であることからセベラマーからキックリンに変更したことも多くあった。

・2014年 リオナ発売

2013年にきたうらクリニック開業。当時から注目していた初めての鉄含有のリン吸着剤。鉄がバインダーであるため安心材料ではあった。リン低下作用に加えて貧血の改善効果も経験し、腎と透析雑誌に投稿した。

リン吸着効果は優れているが、一部の症例でヘモグロビンの過上昇やフェリチンの著明上昇を認め、鉄過剰状態が問題なることもあった

・2015年ピートル発売

リオナとは機序が異なるが、鉄を利用したリン吸着剤。リオナと異なり、鉄欠乏性貧血の適応はなく、鉄は吸収しづらくなっている。フェリチンが上昇しづらいという臨床試験であったが、長期投与していると徐々に上昇するケースはある。しかし、ピートルは1包あたりのリン吸着作用はかなり強力であり、胃酸にも影響を受けづらいため安定した効果が期待される。

・2023年 フォゼベル発売

リン吸着剤ではなく、リンを吸収させない新しい薬剤。優れた点は①1日2回であること。②小さな錠剤で内服錠剤数が極めて少ないこと。リンの管理において、この視点は重要である。もちろんリン低下効果は高いというのは当然のことである。

懸念材料としては、下痢が多いことである。過敏性腸症候群の薬剤と同じような機序であることから、たとえ便秘の方でも下痢には注意を要する。下痢さえクリアできればかなり有力な薬剤となる。