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院長の臨床メモcolumn

2012.02.20

早すぎるシャント作成

腎臓病が悪くなったいわゆる慢性腎不全が進行すると透析になっていきます。

クレアチニン6-7mg/dlくらいになってくると外来レベルで透析の必要性や透析の内容について説明をしてきます。

透析の準備ということになります。

その中で血液透析を選択された場合は透析導入時に備えてシャントをあらかじめ作っておくことが多いです。

当院でもそうしています。

シャントを作っておかないといざ透析を始めるときにシャントがないので透析用のカテーテルを首の静脈に入れなければなりません。

さらに入院して安定してからシャントを作るので入院期間も延びます。

ですからシャントは透析導入前に作ります。

それではシャントを早く作りすぎた場合はどうなるか?

時に透析導入1-2年前に作ってしまったということもあります。

腎障害の進行が予想していたよりも遅いあるいは進行が止まってしまった時。

こういうことは少ないですがあります。

今回、そのような方が透析導入となりました。

2年前にシャントを作ったと。

当院に来られた時はすでに完全にシャントが詰まっていました。

シャント造影をするとシャントのメインルートが随分前から閉塞していた所見でした。

これはシャントを早く作った時の落とし穴です。

通常週3回透析でのシャントチェックをどなたでもしています。

脱血不良になれば、音が悪くなればシャント異常だと気付きます。

しかし透析に入る前はこまめにみませんし、脱血不良にもなりません。

ですから知らない間に詰まっている可能性があります。

しかも全部詰まるのではなくて、メインルートの一部が詰まってしまうことがあります。

これだと吻合部でのシャント音は聞こえます。

ですから患者も医師も大丈夫と思ってしまいます。

これが落とし穴です。

音が大丈夫と思っても、本当にシャントを作った時と同じ音が続いているか?を確認する必要があります。

そうしないと今回のように知らない間にメインが詰まっている可能性があります。

エコーも定期的に必要です。

シャントはメインの良好な血管が使用できてこそシャントと言えます。

シャントを作ってからシャントを作成するまで「その血管が透析で使えるか」ということを常に考えてシャント管理をしなければなりません。

シャントを管理するのは透析室だけではなく、透析導入前の医師の大切な仕事になります。