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院長の臨床メモcolumn

2012.05.29

低血糖の危険性

今回は糖尿病のお話。

HbAicという糖尿病で有名な項目があります。

これが高くなると合併症がでやすいというものです。

合併症といっても細小血管障害といって網膜症や腎症や神経症を示します。

決して脳卒中などの大きな血管の障害を示すわけではありません。

実際、HbA1cや空腹時血糖の値が良好にコントロールされていれば細小血管障害は抑制できますが、大血管障害を抑制できなかったというデータが報告されています。

HbA1cは重要ですが、最近、低血糖の危険性について報告されてきています。

急激にHbA1cを下げすぎると死亡率が高くなるという報告がされました。

「血糖を急に下げてはいけません」ということでしょう。

しかし、実際はHbA1cを急激に下げるということよりも、血糖を下げようとするあまり重篤な低血糖を引き起こし、それが死亡につながる危険性があるということです。

HbA1cがいい方にも低血糖の危険性がありますが、HbA1cが高いという血糖が高い方にも低血糖の危険性があります。

血糖が高いのに低血糖??

と思われる方もいらっしゃると思います。

HbA1cが高い方はもちろん高血糖が多いですが、インスリンという注射を使っている方が多く、寝る前から朝の間に低血糖になっていることがあります。

実際、HbA1cが高い方の方が低血糖になる合計時間が長いというデータがあります。

臨床家としての注意事項として、早朝時の血糖が高いからといってすぐに眠前のインスリンの量を増量しないことです。

場合によっては夜間の低血糖を誘発し、その反応で早朝時血糖が高く出ているかもしれないからです。

低血糖が死亡率上昇との因果関係が報告されてきた以上、我々としては血糖の変動幅を小さく調整する努力をしなければなりません。

血糖が乱高下すると低血糖になりやすい。

進行してしまっては乱高下しやすいので早期の治療介入が必要と思われます。