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院長の臨床メモcolumn

2019.01.27

インフルエンザ予防的投与に対して思うこと

病院や施設での集団感染への対策としての抗インフルエンザ薬の予防的投与が注目されています。

患者様、施設の利用者様の健康維持を考えると予防的投与は必要になります。

もう一方で病院や施設側からしても医療安全対策という点でも予防的投与は非常に有意義です。

この2点、双方のことを考えると予防的投与はするべきと考えます。

懸念材料も2点あります。

1点目は副作用の問題。

予防的投与はタミフル(後発品の場合はオセタミビル)、リレンザ吸入薬となります。

吸入の方が副作用としては少ないですが、特に施設の患者様では吸入が困難な場合もあります。

タミフル、オセルタミビルに関しては胃腸障害を中心とした副作用があります。

この副作用のことも考えると抗インフルエンザ薬投与の際には同意書が必要になってくると思います。

病院やクリニックの医療施設に関しては医師が常駐していますので対応しやすく、話も進みやすいですが、介護施設では医師が嘱託医となっていますので、副作用の出現の懸念はなお一層高くなると思います。

もう一点は費用負担の件。予防的投与はだれが負担するのか?

一般的には、予防的投与の基準を満たす方ではタミフル、オセルタミビル、リレンザの処方は可能です。

しかし、保険適応ではないため、1患者さん当たり3000-5000円くらいの負担が必要とされています。

これを患者様や利用者様が負担していただけるのか?

発生の時期が増えると2回、3回となってきます。その分、費用負担も倍増してきます。

それでは病院や施設側が負担するのか?という話にもなっています。

50人の施設であれば15-25万円相当の負担がかかります。

これも回数が増えれば負担額が増えます。

いずれにしろ保険適応ではないので、安全性と費用負担の問題が発生します。

おそらくは予防薬に関しては「治療」ではないので、保険適応にはならないでしょう。

ではどうするか?各施設にゆだねるということになります。

病院にしろ、施設にしろ、患者さん自ら発生したというより持ち込みで感染した可能性もあります。

それを自分たちの責任とすると、面会禁止となります(ただし、スタッフへのインフルエンザ対策は万全にしておく必要はあります)。

そんなことはそうそうできません。

インフルエンザ発生したのは誰かのせいだと誰かを責めたとしても何の解決にもなりません。

冬はインフルエンザが流行します。

これを完全に予防することは不可能です。

これだけ猛威を振るっていて、自分たちの施設だけ何もないということは少ないと考える必要があります。

感染が発生して当然なのです。

ですから、発生に対して騒ぐ必要はありません。

流行するということを当然とした対策を講じておく必要があると思います。

安全性を考えるのであれば処方方法、同意の方法を考えておく必要があります。

負担を考えるのであれば、予防的投与として医師の処方+薬局での患者様や利用者様が購入にするのか、施設側負担にするのか?

1年1年、対策を講じ、必要に応じて修正を加えながら、対策を明確にしていかなければならないと思います。

インフルエンザ感染は時期が過ぎれば落ち着きます。

しかし、これを機に対策を明確化する必要はあるという印象を持ちました。