今週ある高齢透析患者さんがなくなりました。
徐々に認知症が進行し、体力が減退し、食事もとれなくなってきていました。
もともと心臓が丈夫ではない方なので、状態の悪化とともに透析中の著しく血圧が下がるなど維持透析がかなり困難な状況になってきました。
状況をご家族に説明し、透析が困難になってきたということと精神状態と身体状況の悪化から「慢性透析中止」となりました。
「慢性透析の中止」は何度も経験したことがありますが、これは本当につらい決断と覚悟が必要です。
この状況では患者さんは話しできませんのでご家族とのやり取りになります。
延命至上主義に対する反対意見もありますが、医療従事者は基本的には延命を第一に考えるべきだと思います。
ですからその反面、「透析中止」という判断は非常に責任がかかる判断になります。
日本には透析中止のガイドラインはありません。
おそらく今後もできないと思います。
医師それぞれに考えがあり、患者さんやご家族と話をして成立するものですから。
場合によっては弁護士や学識経験者が必要なことがあるかもしれませんが、基本的には医療者、患者さんご家族の話し合いになります。
この話は「命」を継続するかどうかの話になります。
「透析中止」は天命を迎えることになります。
そして、その判断は決して医療の敗北ではなく、その患者さんの天寿を安楽なものに導くものだと考えています。
「透析中止」が決まって考えなくてはいけないのが点滴内容。
これはあまり書かれていない内容だと思います。
透析中止して数日から10日くらいで寿命を迎えます。
透析中止する時は御家族からすると「これ以上苦しめたくない」という思いが非常に強いです。
「意識もないのだから楽に死なせてあげたい」と。
医師によると思いますが、点滴を多くすると体がどんどんむくんでしまって、顔や体型が変わってしまうので点滴量は少なくする方が多いともいます。
あとはカリウムを点滴すると不整脈を誘発するので点滴にカリウムを入れない方が多いと思います。
ですので点滴は少なめでカリウムが入っていないものを使用するのが一般的だと思います。
僕もそうしていました。
果たして、それでいいのか?
しかし今回の患者さんは透析中止後3週間生きられました。
つらそうな時もありました。
見ているご家族も心配そうでした。
そのようなご家族を見ていると、たとえ不整脈を誘発しても苦しめるくらいならカリウム入りの点滴をしてもいいのかなあとふと思いました。
誤解して頂きなくないのは大量のカリウムを投与し安楽死させるのではなく、ごく一般的にあるカリウム入りの点滴のことです。
その方がこの患者さんは苦しめずに済んだのかもしれないと思いました。
医師があまりこのようなことには触れるべきではないと思いながらも、医師として「患者さんの最期」をどのように迎えさせてあげるかを考えるということも大きな責務だと思いました。