炭酸カルシウムは透析患者さんのリン吸着剤として長年使用されています。
今でこそ、鉄含有リン吸着剤、炭酸ランタン、塩酸セベラマーなど非Ca含有リン吸着剤が多数発売されていますが、僕が研修医の頃は、まだアルミニウムが使用されていることもありましたが、基本的にはリン吸着剤といえば「炭酸カルシウム製剤」でした。
この炭酸カルシウムはリン吸着作用も強く、基本的には副作用が少ない。
リン吸着剤の副作用といえば、嘔気、胃部不快感、便秘、下痢など消化管障害が多く報告されています。
しかし、この炭酸カルシウムはそのような消化管障害の副作用は少ないです。
一方で、懸念されているのは、「カルシウム」が含まれているため、異所性石灰化といわれる血管石灰化による心血管イベントの進行、死亡率の悪化など。
海外のメタ解析でもCa含有リン吸着剤は非含有吸着剤と比べて、死亡率は高いと報告されています。
また、有名な報告として塩酸セベラマーとCa含有リン吸着剤とで死亡率を比較した研究では、セベラマーの方が61%死亡率を抑制したと報告されています。
しかし、この度、日本で行われたLANDMARK試験では、炭酸カルシウム群と炭酸ランタン群において、主要評価項目である、脳卒中、TIA、心不全の発生率は両群で有意差はなかったようです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8132143/
カルシウム負荷ということは常に配慮しながらも、「炭酸カルシウム=よくないリン吸着剤」ではないということを示した報告であると思います。
これだけリン吸着剤の種類が増えても、選択肢の一つとして忘れてはいけないものだと思います。