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院長の臨床メモcolumn

2020.09.24

透析における鉄欠乏性貧血の管理(医師カンファ)

○鉄の評価頻度
鉄剤投与中は月1回、鉄剤投与しないときは3か月に1回

〇鉄剤投与基準
・ESAが投与されていないとき
Hbが目標を維持できない患者に対して、フェリチン50未満で、ESAを先行して、鉄剤を投与

 

・ESAを投与し、目標Hbが維持できない
フェリチン100未満、かつ、TSAT20未満の場合、鉄剤を投与

・さらに、ESAを投与しても、目標Hbが維持できない患者① 利用率を低下させる病態がない場合

② フェリチン100未満、あるいは、TSAT20%未満の場合に鉄剤投与を考慮

・フェリチン300以上は鉄補充療法を推奨しない。

・フェリチン50以上、かつ、目標Hbが維持できている状態での鉄剤投与は推奨されてない。

 

〇鉄欠乏のマーカー
・TSAT=血清鉄/TIBC*100%≦20%
・フェリチン≦100
*本来は12未満であるが、CKD,HDにおいては尿毒症、炎症の影響で、高値を示すことがあり、12未満など低値を示すとは限らない。
・MCV:4-5か月で低下傾向

 

●投与方法について
・経口鉄剤のほうが腸管吸収など生理的な投与方法である。
*吸収効率が悪いため、1日必要量(2mg)の数十倍である40-100mgが必要となる。

・静脈内投与では1回40-50mgの鉄を10-13回投与する。
*体内の鉄量は2gであるにもかかわらず、1回の鉄剤投与量は0.5gと多いため、フェリチンの上昇に注意する
*鉄剤の投与によりフェリチンが過剰に上昇する可能性がある。特に静脈内投与ではフェリチンの上昇とともに酸化ストレスが増加するという報告があるため要注意である。
*透析患者では血清鉄が低いにもかかわらず、フェリチンが増加するという鉄利用障害がある。つまり、鉄が血管内の量は少なく、細胞の中に無駄に鉄がたまっている状態(鉄の囲い込み)が生じている