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院長の臨床メモcolumn

2020.06.26

唾液を用いたインフルエンザ迅速検査

(概要)

・以前にも、このブログで金ナノ粒子を用いた高感度PCRを用いて、インフルエンザへの唾液検査の有効性について掲載した。鹿児島大学の西先生が中心となって報告されている中に、鼻咽腔のインフルエンザ迅速検査陰性症例に対して唾液PCR検査を行った報告があった。その中では、唾液でも陰性であった症例が73%、陽性であった症例は27%であった。一方で、迅速キット陽性の症例では唾液PCRでも陽性であった。

 

・インフルエンザ迅速キットで唾液がいいのか?鼻咽腔がいいのか?

2017年に韓国からの報告で、上記を同時採取し、比較検討した試験。コントロールは鼻咽腔PCRとし、それぞれの感度と特異度を測定している。

4つの迅速検査キットで比較検討している。

精度の高い迅速キット:感度⇒鼻咽腔74% 唾液60%と鼻咽腔で感度がやや上回った。

また、鼻咽腔検査に唾液検査を加えることによって精度が10-13%向上した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28111058/

 

(感想と印象)

・高感度のPCRを用いることができるのであれば、唾液でも十分な確率でインフルエンザ検査ができる。ただ、検査施設は限られていることと、結果が出るまでに時間を要した場合、治療開始まで時間を要してしまう可能性がある。インフルエンザの治療は、発症48時間以内であることから、結果が間に合わない可能性がある。ただ、PCRといえども、唾液を用いたインフルエンザ検査を導入するかどうか検討する余地は十分ある。

・韓国の報告は非常に有意義であり、今冬、唾液の迅速キットを導入するべきかどうかの非常に有用な情報になると考える。現在、簡単に鼻咽腔採取ができないことを考えると唾液検査に頼らざるとえない。唾液の感度は低下するものの、インフルエンザの流行の有無、予測因子スコアなど他の情報を総合的に考えると「唾液を用いた迅速検査」を考慮してもよいかと考える。唾液に関しては結合シアル酸の量が人によって異なるため、個人差はあるものの、迅速キットを用いないことのデメリットが大きすぎると考える。